1964年 小森白監督
フイルムは二度と観ることができない幻の作品となってしまったが、スチルは何枚か残されている。
写真の木馬責めは、捕らわれた切支丹の拷問シーンとのこと。奇譚クラブ1965年3月号で、おもだか・しの氏が語っているので、引用する。
――此の上に、腰巻に色襟の襦袢姿で、荒っぽく結られた女を吊下して、跨がらせ、足に石の垂りを結付けてから打ちます。その後、夜のシーンで、別の女の馬上姿を見せますが此度は腰巻だけの半裸で、静かに身悶えして居り、今少し明るければと、気を持たせる名シーンでした――
また、小説SMセレクト1985年12月号では、ロマン派生氏が以下のように語っている。
――その中に出て来た木馬責めのワンカットは、本当にショッキングで感動的だった。ほとんど逆光であまり細かい所は見えなかったのだが、全裸と覚わしき女が後手に縛られ、三角木馬に乗せられていて、間もなく気絶したのか、ガックリと首をうなだれる十秒か二十秒のカットだったが、この世にこんな美しいものがあるだろうか、と思った――
……木馬に跨がらされ、静かに身悶えする女囚。このシーンを動画で見ることができた者を、羨むばかりである。
大映 井上昭監督 1968
作品冒頭にある拷問解説シーン、のスチル。
頭髪を吊り上げている点、背を笞で打擲している点、木馬の足に小さな車輪が付いている点が特徴的か。
この木馬、前後に転がって揺らすことができるとしたら、かなり悪辣な代物である。
小池一夫原作 神田たけ志画 1988
拷問のイメージシーン。
「秘録おんな牢」の構図と酷似しているが、発表年はこちらが後。
ナックジャパン 1997
切支丹囚徒を改宗させるため、新手の拷問方法を考案してゆく男の物語。
幕府公式の拷問、笞打ち・石抱き・海老責め・釣責めを耐え抜き、さらに駿河問いに掛けても転ばぬ切支丹の女囚がいた。
そして「おなごの急所を責めることが肝要かと存じます」との具申により作り出された責め具、三角木馬が使われることになった。
後手に縛られ吊り上げられた女囚は、両足を開かれ木馬の背に降ろされた。さらに足首に重石が吊り下げられると、股間に激痛が走りたまらず絶叫する。
さらに腰を掴まれ揺さぶられ、意識も遠くなるが決して転ぼうとはしなかった。
「改宗するまでこのままじゃ!」
大映 安田公義監督 1968
主人公お波は、鍵役に因縁をつけられて懲罰に掛けられる。鍵役は親切にも「お前の望みの責め道具を言いな」と尋ねた。
「どれがいいかと聞いているんだ!」と怒鳴られても、お波は答えない。
私ならば「木馬で罰をお与えください」と即答するだろう。
すぐ脇に木馬が鎮座しているにもかかわらず、それを選ばないとは実に勿体ない話である。
「くノ一忍法帖2 聖少女の秘宝」 キングレコード 1992
踏み絵を拒否して捕らわれた切支丹への拷問。
左手にある木馬は使われずじまい。
実に勿体ない話である。
「美女奉行 おんな牢秘抄2」 キングレコード 1995
主殺しの罪に問われている娘、おりょうは苛烈な拷問に掛けられていた。
逆さ吊り、笞打ち、駿河問いと厳しい責めが続くが、右手の木馬は使われずじまい。ただの飾りものである。
実に勿体ない話である。
井上和夫 光文社 1969
生頼範義画伯による挿画が多数収められた、素晴らしい一冊。