女囚幻想のこと  


2018/02/25 掲載

「女囚幻想」シリーズとは

 シネマジック制作。
 江戸時代の女囚に憧れる娘たちの夢想を描いたアダルトビデオ。
 1989年から1995年にかけて、6作品が作られた。
 また、2015年にS&Mスナイパーより同タイトルが復活し、現在4本が作られている。


女囚幻想


 1989年作品
 ――江戸時代に牢屋敷があった、小伝馬町の十思公園にたたずみ、過去に思いを巡らせるマゾ娘がいた――
 彼女は「徳川幕府刑事図譜」の拷問絵図を見ながら、また麻縄の感触を味わいながら、柱を使った自縛をしながら、拷問されている自分を想像して自慰をするのだった。
 空想の中の彼女は、浅葱色の囚衣をまとった江戸時代の女囚だった。石を抱かされ、吊され、磔にされて笞打たれるという苛烈な拷問に、涙を流して耐えていた。彼女は、そんな女囚に「成りきって」自慰をするのだった。
 現実と夢想を往き来しながら、彼女は女囚拷問の世界に浸り、耽った。
 そしてラストは、リアルの彼女と空想の彼女が、二人の女囚として身体を重ねるシーンで終わる。


 私はこの作品で、「江戸時代の女囚になって、拷問を受けている空想をしながら自慰をする」のは、自分だけではないことを知り、涙が出るほど嬉しかった。
 また、伝馬町牢屋敷跡地 でロケをしてしまうあたり、制作者の女囚に対する思い入れが感じられて、実に素晴らしい。牢屋敷の配置の解説をするSMビデオなんて、金輪際出ないだろう。
 私も十思公園のベンチに腰掛けて、江戸時代の女囚、そして拷問に思いを巡らせることがある。この作品の主人公は、まさに私なのだ。


女囚幻想 II ―緊縛夢人形―

 1991年作品
 ――大学で江戸時代の刑法を学ぶ片山小夜は、歴史学者・早坂の元に書生として押しかける。彼女もまた、江戸時代の女囚に憧れるマゾであった――
 早坂の仕事を手伝う小夜は、夜になると歴史書を紐解き、拷問解説のページを読みふけった。海老責めの拷問絵図を見て、自分が女囚として海老責めに掛けられている空想をしながら、自慰をするのだった。



 空想はエスカレートして、駿河問いに掛けられる。笞で小突かれて身体が揺れると、苦しげに喘ぎ、涙をこぼした。



 小夜は次の日、早坂の部屋に隠された麻縄を見つける。そしてその夜、縄の感触を味わいながら自慰をした。股に麻縄を食い込ませた小夜が空想するのは、後手に縛られて笞打たれる女囚の姿だった。拷問を受ける女囚にシンクロした小夜は、縄にまみれて激しく乱れたが、その姿を早坂に目撃されてしまう。
 小夜は取り繕うことなく、自分を縛ってくれるよう早坂に懇願するのだった。
「君はこんなパジャマより、江戸時代の女囚が着ていた囚衣のほうがよく似合うよ」
 囚衣を身に付け菱縄で縛られた小夜は、姿見に映った己の姿を見て恍惚とするのだった。
 そして、夢か現世か定かでない竹林で、小夜は石を抱かされ笞打たれる。



 江戸時代の犯罪・刑罰について学び、拷問の解説文だけでイケる小夜は、まさに私なのだ。森下亜弥の演じる片山小夜になって、女囚拷問プレイをしたい……。


女囚幻想 III ―無残絵いろ地獄―

 1992年作品
 江戸時代の浮世絵師、絵金に匹敵する作品を依頼された画家がいた。画商の叶順子は、緊縛モデルの中川あずさを連れ、画家の元を訪れる。筆の進まぬ画家は、インスピレーションを得るために、あずさを縛り、抱き、そして責めた。
 この作品に女囚の要素は無い。


女囚幻想 IV ―夢魔の緊縛―

 1993年作品
 小さいときから、縄で縛られてみたいという願望があった小泉しおりは、ふと目にした紙芝居ビデオ「一揆の花」に激しく魅了された。そのストーリーは、
 ――飢饉のおり、名主の徳右衛門は一揆を企むが、娘のおきぬが代官に捕らえられてしまう。一揆のあらましと父親の居所を問われて、おきぬは日々責め立てられるのであった――
 しおりは、自分がおきぬになって拷問される空想をしながら、自慰に耽った。



 さらに物語は進み、病弱な姉のおゆきも捕らわれる。妹の目の前で吊られ、激しく笞打たれるおきぬ。女囚姉妹はお互いにかばい合いながら、拷問に耐えるのだった。




 江戸時代の空想から覚めたしおりは、訪問先の紙芝居師の家でリアルに縛られている自分に驚く。だが、果たしてそれは現実なのか夢なのか、わからなくなったところでこの作品は終わる。

 他作に比べて、空想の拷問シーンが長時間見られる、お得な作品。ただ「お代官様、お許しください」というセリフがひたすら繰り返されるので、白けてしまうかもしれない。


女囚幻想 V ―からくり縄人形―

 1994年作品
 江戸時代の悪女を描いた芝居「斬られお富」の朗読と、現実の阿婆擦れ、きり子の不倫がシンクロしつつ交互に語られる。
 ヤクザの情婦と、それを寝取った男、露見した後の折檻シーンに興味のない方は、30分ほど早送りしても構わない。



 やがて、お富が奉行所に捕らわれ、丁寧に緊縛され、笞打ち、水責めを受ける空想シーンが始まる。最後は磔で処刑される。
 夢から覚めたきり子は、現実世界でも磔の罰を受けていた。


女囚幻想 VI ―写し絵の女―

 1995年作品
 江戸時代の責め絵に興味を持ったセーラー服女子高生。薬を盛られて、夢の中の折檻・拷問シーンへと誘われる。レズビアン相手のお姉様と共に吊されて、激しく竹笞で打たれるのだった。



 目が覚めた後も、緊縛百合プレイの深みへとはまってゆく。
 4作目に続いて、女囚の連縛あり。リアルの百合シーンにたっぷり時間を掛けた作品。


女囚幻想 まとめ

笞打ち:
 囚衣の上から打たれることが多いが、2、6作目は素肌でもあり。
石抱き:
 1、2作目にあるが、十露盤板は敷いていない。
海老責め:
 ゆるい胡座縛りならば、1、2、4作目で見られる。
釣責め:
 足が浮いていないもの、縄を多く使って体重を分散させているものが多い。4作目では逆さ吊りも見られる。
駿河問い:
 それらしきものが2作目にある。
水責め:
 水を掛けられるだけだが、4、5、6作目にある。
蝋燭責め:
 6作目にある。
木馬責め:
 無い!!!

 女囚幻想シリーズは、「現実のドラマ」「江戸時代の空想」「現実のSMプレイ」の三つのシーンの組み合わせで構成されている。
 私的には、このうち現実のSMプレイシーンがとても邪魔に感じる。この作品の購買層は「ただのSMプレイには興味ありません! ましてやSEXシーンなど!」だと思うのだが、そうもいかない事情でもあるのだろうか。拷問シーンだけでは売れない、と制作者が判断しているのかもしれない。
 この手の作品レビューで「拷問ばかりでつまらない。抜けない」と最低評価を付けられているのを見たことがあるが、それは観る側のチョイスが間違っているだけだろう。我々?にできることは、「空想の拷問シーンをもっと増やして欲しい。リアル絡みシーンなどいらない」という感想を、制作者に送り続けることだ。



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