両手首、両足首をそれぞれ縛り合わせ、背中側でひとまとめにして釣り上げる拷問。背中に重石を乗せることもある。
釣られた被疑者を何回転もまわして釣り縄にねじりを掛け、戻る反動で勢いよく振り回す。ねじりが解けるまで、右に左に回り続ける。
やがて、全身から汗と脂が、鼻や口から血が噴き出したという。
この拷問は、駿河町奉行、彦坂九兵衛が考案したといわれており、切支丹宗徒などに対しておこなわれたとされる。
見た目がアクロバティックな拷問、駿河問いを体験してみよう。
縄を掛けるのは、後ろに回した両手首と、両足首のみとする。
シンプルな形が一番苦しく、余計な縄を追加すると体重が分散され、苦痛が和らいでしまう。
床に腹這いになり、一本の縄の両端で、右手首と左手首を縛られた。
もう一本の縄の両端で、右足首と左足首を縛られる。
そして、それらの縄をチェーンブロックのフックに掛けて、吊し上げられる。
手首と足首が離れすぎないように、また上体が下がりすぎないように縄を調整すると、見栄えが良い。
胸が床から離れ、身体が揺れる。
縄が手首に食い込み、耐え難い痛みであった。
屈辱ながらも、一旦下ろして頂く。
ちょっとズルをして、手首に布を巻いた上から縛って頂く。
そして、再度吊り上げ。
手首、足首に縄が食い込むが、なんとか耐えられそうだった。
しかし今度は、背中・腰の痛みがとても辛くなってきた。
この上さらに背中に重りを載せられたら、とても耐えられない拷問だと思った。
さらにズルをして、胸に掛けた縄に体重を分散させてみる。
これならば、しばらく吊られていることができそうだった。
そこで、駿河問いの極意であるところの、回転を味わってみよう。
身体が回され、吊り縄に捩りを掛けられてゆく。5回、10回。
手が離され、ゆっくりと回り始める身体。
視界が横へ横へと流れてゆく、不思議な感覚。
……しかし縄の捻れが弱いせいか、回転する速度が遅い。
もっと、ぐるんぐるん回されてみたい。
吊り縄を工夫して、より強く捻りが掛かるようにした。
再度、身体を回される。5回、10回と。
そして、今度は勢いよく回り始める身体。
呻き声が漏れる。身体中から汗が噴き出す。
尋常でない、目眩と吐き気。
目をつぶっても、頭の中がぐわんぐわんする。
気持ち悪くて、気持ち良い!
これ以上回されたら嘔吐する、というところで、信乃は折れた。
「お許しください、申し上げます……」
身体を降ろされた後も気分の悪さは治まらず、しばらくは上体を起こすことすらできなかった。