女囚拷問

著:山形木馬




                   序 章

 『こんなしぶとい娘(あま)は初めてだぜ。』
 岩松は娘を見ながら腕組みをしてあきれたようにつぶやいた。
 
 娘の年の頃は20代前半であろうか、艶々したストレートの黒髪が肩に少しかかり、アーモンドのような大きな二重の眼、長い睫毛、すっきりと形の良い鼻、花のつぼみのような唇、頬は少しふっくらしていて口元から真珠のような白い歯が覗いている。小柄ではないがそれほど大柄でもない。細身だがほどよく筋肉がついて肉づきのよい肌。豊かな肉体を感じさせる体つきである。肌は抜けるように白く肌理が細かい。並々ならぬ美しい娘だ。
 娘は後ろ手に縛られて木馬形の刑架にまたがっている。
 前に一本、後ろに二本の木製の足で立っている木馬の胴体は、背に当たる部分が鋭角の山形になっていてまたがった娘の身体が鋭く聳立した木馬の背で裂かれている。
 江戸時代、この刑具は三角木馬とよばれ、キリシタンの女性信徒の信仰を捨てさせるために使われたという。木馬に乗せられた女囚は股を木馬で引き裂かれ、苦痛と辱めを同時に味わうことになったのだ。どれほど多くのキリシタンの女達がこの残酷な刑架に乗せられて、苦痛と辱めに堪えられず信仰を捨てたことだろう。逆にこの刑架で耐えぬいた女性はよほど信仰心に篤く気丈だったのであろう。だがその報いは十字架に架けられて無残な最期を遂げることだったに違いない。
 
 天井から釣り下がった裸電球と木馬の前方左右から照らす梁に取り付けられた2本のスポットライトが美しい娘の身体を照らしだしている。
 娘は一糸まとわぬ全裸だ。
 娘の上半身は太い麻縄で高手小手に縛られ首にも縄がかけられてどす黒い麻縄が白磁のような滑々した肌に菱縄縛りに縦横に食い込んでいる。娘の顔は正面を向いたままほとんど動かない。艶やかな黒髪が束ねられて縄で天井の梁に繋がれているからだ。縄はピンと張られて頭を吊られているので哀れな娘は背筋を伸ばして前を向いている以外にないのだ。
 娘の豊かな乳房は菱縄にくびられて盛り上がり、薄紅色の乳首が膨らんでその周囲の血管が色白の肌の下から薄青く浮き出している。縄目に彩られた白い肌は一点の染みもなく艶やかだ。縄の周りの肌が薄桃色に染まっているのはきつい縄がけで皮膚が鬱血しているからだろう。木馬の鋭い背が娘の下半身の薄っすらとした茂みにがっしりと無残に食いこんでいる。
 
 三角木馬に架けられれば、普通なら男でも泣き叫ぶところだが、娘は唇を噛みしめ、ときおり喘ぎ声を漏らしているだけだ。しかし木馬の両側に力なく垂れたすんなりとした両脚がぶるぶると震え、顔や肌には玉のような汗が浮かんでいる。激痛に気丈に耐えているのだ。キリシタンの女囚のように。
 
 しばらくして娘の口からつぶやくような哀願が切れ切れに洩れた。
 『やめて・・・お願い・・・やめてください』
 生まれたままの姿で菱縄をかけられて木馬責めに苦悶しながら、理恵は過去を走馬灯のように思い出していた。

 生い立ち

 秋山理恵は幼いときに父を病で亡くし、母は高級結婚紹介クラブで知り合った医師とまもなく再婚した。医者や弁護士などエリートとお嬢様の高級見合いクラブなので、身元は保証されているはずであった。新しい夫は病院を経営し、ハンサムで優しかったが、結婚するとそれは仮面であることが分かった。病院が順調である間はよかったが、莫大な金を投資して最新医療機器を購入し、病院の規模拡大を図ったことが裏目にでてやがて病院は人手に渡り、莫大な借金を抱えてしまった。そうなると人間の生地がでるものである。まじめに医師として働けばよいのに、賭博や娘や酒に明け暮れ、まともに勤務医として勤めようとしなかった。借金取りに追い回され、理恵の母もパートで働きに出なければならなくなった。その母に義父は毎晩のように暴力をふるった。その母も2年後、交通事故で死んだ。
 妻が死んでも鉄蔵は仕事もせず、ギャンブルと娘にあけくれ、毎日酒臭い息をして帰宅しては中学生の理恵を折檻した。後手に縛られて柱につながれ放置されることは珍しくなく、時にはささいな理由で革ベルトで打たれることもあった。もちろん学校へまともに通えるはずもなく心配した教師や民生委員が訪ねてきても、鉄蔵は大声を張り上げ、追い返してしまう。母の兄、大沢真一は横浜の裕福な貿易商であったが、姪の置かれた悲惨な状況を知って、人身保護を裁判所に願い出て認められ、理恵を家に引き取った。鉄蔵は厄介払いができたとでも思ったのか、それ以上干渉しようせず、やがて自宅を引き払って行方知れずになってしまった。
 真一には理恵より5歳年下の一人娘がいたが、真一夫妻は理恵をわが子同然に育て、やがて1年もたたない間に理恵は明るさを取り戻し、幸せな大沢家の娘として馴染んでいった。大沢家の一人娘の千絵とも、実の姉妹のように睦まじく過ごすようになった。二人とも美しい顔立ちで美人姉妹の評判高く、近所の人たちから可愛がられたものであった。
 もともと聡明な理恵は進学校として名高いA高校に合格した。美しい母とハンサムな鉄蔵の間に生まれた理恵は小さい頃から周囲の目をそばだたせるほど可愛く、成長するにつれて美しい乙女に変貌していった。
 背はそれほど高くはないが、顔が小さく腰高で手足がすらりと伸びているので実際より背が高く見えた。杏のような大きな目とくっきりした少し茶色がかった瞳と通った鼻筋、肌が白いところは母親に似て、ぽっちゃりした肉感的な唇と美しい真っ白な歯並びやすらりとした肢体は父親に似ていた。高校時代にはテニス部のキャプテンとして活躍したが、スコートからのびる筋肉がついてキュッと締まった太い太腿とカモシカのようにすらりと伸びた脛、細いウエスト、円くて美しいヒップ、ショットのたびにふるえる見事な胸のふくらみにどれほど多くの男子生徒が目をそばだたせたことだろう。
 2年生で早くもインターハイで優勝。プロになることをコーチにすすめられもしたが、理恵は人の役に立つ仕事につきたいという気持ちが強く、やがて医師になる決意を固めてK大学医学部に進学し、女子学生用のマンションに一人住まいをすることになった。母親がきちんと手当てを受けていれば死なずにすんだかもしれないという思いもあった。家の前で帰宅途中トラックにひき逃げされた母を、鉄蔵は自分で見るといって病院に連れて行かず、適当な治療を施した。後ほど総合病院に転送されたものの感染症で手遅れになってしまったからである。
 理恵にはしかし人には絶対に知られたくない秘密があった。
 鉄蔵から折檻された記憶が不意に時と場所をえらばずよみがえる。その不愉快な記憶はトラウマであると同時に、理恵自身理解できないことであるが、ある種の甘美な喜びの感覚を彼女にもたらした。幼い頃、義父から虐待を受けているときに感じていた嫌悪感や憎悪を思い出すと、なぜかそれとはまったく異なった感情が湧きあがってくるのだった。
 そこには異常なもう一人の自分がいた。被虐に溺れる自分だ・・・。高校生の頃には、幼い肉体に加えられた折檻の記憶や縄の感触を、被虐的な喜びをしびれるように思い出すようになっていたのだ。
 理恵は医学部で精神医学も学んで、その正体を自らの歪んだ欲望の源が、幼児期に父から満足な愛を与えられなかった心の空洞にあると認識できたが、認識することと感じることとは全く別物だった。またそうならない人の方が圧倒的に多いのになぜ自分が性的な部分で異常な感覚を持つに至ったのか、それは分からなかった。愛を求めると苦痛を与えられる。いつの間にか苦痛が愛に通じるものになり、理恵の中で性の開化とともに苦痛が快楽となったのであろうか。
 大学2年になったばかりのとき、神田の古本屋街で専門書を探していた理恵は何をどう間違ったか、SM関係の書籍を置いてある一角に入りこんでしまった。理恵の目は緊縛された裸の女性から目をそらすことができなくなった。理恵は何かに導かれたように周囲の目を気にしながらそのいくつかを手にとって購入した。コーナー専用のレジで代金を支払うときにはさすがにどきどきしたが、幸い店員は顔を上げようともせず無愛想に代金を受けとっただけだった。
 理恵は家に帰ってあきもせず何度も何度も本を手に取り,ネットで偽名を使って購入したSMのDVDを繰り返し見た。特に心をひかれたのは江戸時代の女囚拷問である。若い娘が灰色の囚衣を剥ぎ取られて全裸にされ、後手に縛られて鞭打たれ、石を膝の上に抱かされ、三角木馬に架けられ、最後に磔にされる・・。
 いつのころからか理恵は自分がその女囚になりたいと願うようになった。麻縄を日曜大工の店で購入し、自室を閉め切って自縛の真似事をするようになった。何不自由ない幸せな境遇にいるのに、そのときだけは幼少時に心が返り、恐怖に裏打ちされた被虐の喜びにひたった。はじめのころは着衣のまま恐る恐る上半身に縄を巻き付けているだけだったが、そのうち下着だけで自縛するようになり、パンティだけになり、ついには一糸まとわぬ全裸で自縛するようになった。縄のかけ方も工夫してしっかりできるようになった。さすがに両手を後ろ手に縛ることは難しかったが、輪をつくって胸縄から背中に先に輪をつけた縄を垂らし、両手首を差し込んで引きしぼると締まるように工夫した。
 彼女がもっとも好んで試したのは、算盤責めだった。本当は木馬責めを試したかったのだが、木馬を製作しても隠しておく場所がないので諦めたのだ。
 日曜大工の店で購入した木材を何本か床に並べ、胸に2重に縄を巻き付けて止め、さらに少し息がしにくくなるくらいに首縄をかけて余った縄後ろに垂らして後ろ手に自縛する。そしてけばだった木材の上に正座し、女囚になった自分を夢想する。一糸まとわぬ全裸で上半身を自ら縛り上げ、さらに股縄までかけて、長時間呻吟することを覚えた。さらに鏡をその前に据え、映っている自分の姿を観ていっそう興奮した。縄目を解いた後には必ずと言っていいほど自慰に耽った。マンションの一人住まいだから声も外に洩れず、友達が来ても居留守を使えばよいので安心して自らの体を痛めつけることができた。そんな『拷問』のあとしばらくの間は腕や足の縄目のあとや傷跡が気になって外出することはできなくなったけれど、風呂に入る時に、裸になって身体の縄目の痕を見ると、理恵は興奮を抑えきれず、また風呂の中で性懲りもなく自縛をするのだった。

 誘 拐

 そんな理恵だったがいったん外へ出ると、快活でまじめで美人の優等生として同級生の憧れの的だった。化粧は最低限、服装も地味でボーイッシュなところがあったので、男子学生ばかりではなく、女子学生の中にもラブレターを手渡す生徒がいたほどだ。化粧をせずとも天性の美しさが際立っていた。その美貌はもとより快活で率直な性格や知性に加えて、理恵には他の女性にはない独特の魅力があった。
 清の乾隆帝の妃で中央アジア出身の絶世の美女、香妃は常に肌からたとえようもなく魅力的な香りを発散して、皇帝は彼女の美貌と匂いに引かれ、片時も香妃を離さず遠征の際にも同行させたという。今の言葉でいえばフェロモンを発散する女であった。理恵もまた香妃のように日ごろからよい香りを漂わせていて、少し汗をかくとかぐわしい匂いが肌から立ち昇り、香水も要らず男たちを惹きつけたのだ。
 『りえちゃん、あなた、どんな香水つけてるの? ほんとに男がまいる匂いよ。』
 と女友達からよく羨ましがられたものだった。しかし不思議なことに親しい男友達はあまりできかった。
 T大学は偏差値のもっとも高い大学だったが、その大学の男子学生にとっても理恵はまぶしすぎる存在であったのだろう。また子供のころから男子生徒のマドンナだったので同級生の女子のやっかみやいじめを受けたことがあり、できるだけ目立ちすぎないように控えめに振る舞うことが理恵の生活のスタイルになっていた。またそれは人とは深いかかわりをもちすぎず、自立した生き方をしたいという理恵の性分に合っていたからでもあった。
 男との付き合いが全くないわけではなかった。医学部の先輩の彼氏がいた。彼とのセックスはそれなりに楽しいものだったが深い満足は得られなかった。彼はきわめてノーマルであったので理恵は自分の秘められた性向を打ち明けることはできなかった。三角木馬や十露盤責めなどはともかくとして、縄で縛ってほしいと何度か口に出かけたが心身ともに純粋で健康そうな彼にはそんなことはとても言えなかった。その彼も今は米国に留学中で時たまメールのやりとりをする程度だった。
 町を歩いていてスカウトに芸能界入りをすすめられることも何度もあったが、芸能界や人目に立つことに全くと言っていいほど関心がなかったので目もくれなかった。
 理恵が大学4年を終了した頃、大沢家を激震が襲った。それは義父が取り込み詐欺に会い莫大な負債を負った上、巨額の手形がヤクザの手に渡ったのである。義父は借金取立てにくるヤクザ風の男たちに怯え、誰にも行き先を明かさず失踪した。理恵が誘拐されたのはその3日後であった。
 5月の初旬のある日、少し汗ばむ陽気だった。大学の正門を出て駅に向かう途中、人通りの少ない道で、車からサラリーマン風の若い男が『お父さんが事故で入院しました。至急案内しますから乗ってください』と慌てている風に言うので、理恵は全く疑うことなく助手席にのりこんだ。後部座席にもう一人スーツの男がいた。理恵がシートベルトをして、車が発車した途端、理恵は後ろに座っていたその男に、薬品をしみこませたガーゼで口と鼻をふさがれ、そのまま気を失った。
 
 それから何刻たったか。理恵はぼんやりとした意識の中で目を開いた。両手を後ろ手に革ひもで縛られて木の床の上に横たわっている自分に気がついた。服装は車に乗り込んだ時の白いブラウスと茶色のスカートのままである。部屋は6畳ほどの広さで床と壁が羽目板でできており、部屋の片隅に便器があった。暗い廊下に面する面は壁ではなく鉄格子が嵌め込まれており、廊下から丸見えである。鉄格子の一部が高さ1m幅50cmくらいの扉になっている。むき出しのコンクリートの天井からは裸電球が一つぶら下がっている。壁には鉄製の輪がいくつもはめ込まれ鎖が垂れ下がっていた。
 『ここはどこなの・・誘拐されたの・・』
 恐怖で全身が総毛立ちながら、理恵は事態を理解しようとしたが、なぜ自分がここにいるのか、なぜ誘拐されたのか知る由もなかった。
 『誰か、いますか、誰か助けてください!』
 何度も大きな声を上げてみたが、反応は無かった。時間にして1時間もたったろうか、革ひもが手首にくい込み、手がしびれ始めた。そのとき廊下に足音が聞こえた。坊主頭の40前後の屈強な男と若い男が、鉄格子を開けて入ってきた。
 年配の方の男が口を開いた。
 『お嬢さんよ。社長の指示でおまえさんにここに来てもらったのはおめえのオヤジの居所をしりたいからだよ。素直に言えばすぐにでも帰してやる。おまえのオヤジは今どこにいるんだ? 素直に居所を言わないと痛い目にあうぜ。』
 『知りません! 私も教えてほしいです。』
 『おまえさんが知らなきゃ誰が知ってるというんだよ! おめえのオヤジが借金を返さないままとんずらしたんだよ。5億だよ。5億! 居場所くらい知ってるだろう?』
 『知らないんです。お願いですから家に帰してください!』
 しばらく押し問答が続き、岩松はいらだって怒鳴り始めたが、父親が何処にいるのか、理恵には想像がついても言えるはずがなかった。たぶん景気の良かった頃に買い求めた海外のある国のリゾートマンションに身を潜めているのではないかと考えていたが、このやくざ共に居場所を突き止められれば父の命にかかわる問題になると思ったからだ。父親も娘たちを巻き込みたくなかったのであろう。姿を隠して以来、京都から心配しなくてよいという内容の葉書が舞い込んだ以外、何一つ連絡がなかった。
 
 『優しくすればつけあがりおって。おまえの身体に聞くしかないわ。』
 岩松は舌なめずりをして理恵の上腕をつかんで立たせると、扉を押して理恵を廊下に突きだし、若い男と二人で理恵を前後に挟み廊下を歩かせた。廊下の両側には理恵のいたのと同じ鉄格子の小部屋がまるで獄房のように左右に5部屋並んでいる。そのうち3つの部屋の中には若い女性がいた。ある者は首輪を嵌められ、ある者は後ろ手に縛られたまま、ある者は壁に取り付けられた鎖で両手を繋がれている。全員が全裸に?かれて拘束されているのだ。部屋は理恵のいた獄房と同じ作りで裸電球が一つ天井から娘たちを照らしている。理恵が鉄格子の前を通ると、恐怖、悲しみ、諦め、怒り、様々な表情が娘たちの顔から浮かんだ。しかし理恵にはそれを感じ取る余裕があるはずがなかった。通りすがりに娘たちを見ながら、自分もあのように裸にされるのかもしれないという恐怖が心をよぎった。
 薄暗い廊下の先の突き当たりに大きな木の扉があり、右手には階段が上に伸びている。
岩松が重そうな扉を開けて中へ入った。部屋の明るい光でほの暗い廊下が照らされたと思った瞬間、理恵は後ろから突き飛ばされ、後ろ手縛りのままつんのめって部屋の中に倒れ込んだ。やっとのことで身体を起こして横座りになった理恵は、周囲の光景に息をのんだ。そこは四方を石壁で囲まれた窓のない異様な部屋である。20畳はある大きな部屋で、床は昔の学校のような黒ずんだ木製である。天井が高く梁が何本か差し渡されている。梁からは滑車やロープが吊り下がっている。部屋の照明は天井の裸電球一つだけでうす暗いが梁に取り付けられた2基のスポットライトが部屋の中心を明るく浮き出すように照らし出している。脚付きの鉄鍋に赤々と炭火が燃えていて部屋が生暖かい。
 理恵を連れてきた2人の男の以外に男が4人そこにいた。3人は20代から30代だろう。その他にもう一人、眼鏡をかけたゴマ塩頭の50前後の男が座っていた。その横の小さな机の上に注射器や医療器具のようなものがならんでいる。もう一人、若い男がその横で三脚に乗せたビデオカメラを調整している。残りの若い男2人は獲物を見るような目つきで理恵を品定めしている。壁には様々な種類の鞭や麻縄の束、鎖が壁に架かっており、床には鉄枷や鉄丸や何に使うか分からない大きな石などが置かれている。壁際には重そうな長方形の平石が数枚積み重ねられ、その横に木製の平たい板が並べて置かれていた。その板が何に使われるものなのか、理恵にはすぐにわかった。理恵が自縛して自らの美しいすねを傷つけていた拷問具と同じものなのだ。決定的に違う点は、板の表面に山型の横木が打ち付けられていて、鋭い角が上を向いていることだった。その上に座らされた自分を一瞬想像して理恵は怯えた。しかし理恵は心のどこかで怯えに身をまかせることを望んでいる自分に気がついていた。そのような自分を感じて理恵は心の底から怯えた部屋の隅に目をやるとあの三角木馬が置かれていた。それこそ理恵が望んで果たされなかったものではないのか・・・。
 『お嬢さんよお、お察しの通り、ここは拷問蔵だよ。今からここであんたを責めようというわけさ。』
 岩松はにやにやしながら言った。

 凌 辱

 男達は床にくずおれた理恵の肢体を嘗めるような目で見ている。理恵を突き飛ばした若い男がTシャツとGパンを脱ぎ、ぴったりとしたパンツ1枚になった。筋肉が盛り上がった見事な身体である。理恵は思わず目をそらした。男は壁から太い麻縄の束をはずして2、3度しごいた。太い麻縄は黒ずんでよく使い込まれているようである。
 『ホントに写真以上の上玉だぜ。それにいい体してやがる。責めがいがありそうだな。そろそろ始めようか、お嬢ちゃん』
そう岩松が言うと、男は理恵の腕をつかんで岩松の前に無理矢理立たせた。岩松は理恵のブラウスの襟をつかむと胸ボタンを引きちぎって左右に引きはがした。ボタンがばらばらと床に音を立てて落ちた。
 『いや! いや! 止めて!』
薄緑色のブラにつつまれた豊かな胸をむき出しにされ、理恵は思わずしゃがみ込んだが若い男は腕をつかんだまま離さない。
 『さあ、次は下や』
岩松はスカートに手を伸ばしてホックをはずし、ジッパーを引き降ろした。
 『いや! いや!』
理恵は足をばたばたさせたが抵抗する間もなかった。岩松がスカートを足首までずらして取り除いてしまうと、そこには下着だけの娘のまぶしい裸身があった。理恵の裸身からフワッと部屋に甘酸っぱい乙女の香りが広がった。
 『へへへ、いい匂いがするぜぇ。こんなのは初めてだな。なあてめえ達。』
男どもは一斉に頷いた。確かに理恵の身体の匂いは猫がマタタビに引き寄せられるように
男の気を引いたようだった。どの男も目がギラギラし始めている。

岩松は理恵の手首を縛っている革紐を解き、天井の滑車から垂れている縄の端で理恵の手首を前縛りに堅く縛りあげた。そして縄を引くと理恵の腕が徐々に持ち上げられていく。
『あ、あ、やめて!』
 足がつま先立ちになるまで理恵を吊りあげると岩松は縄尻を柱の鉄輪に結んで固定した。理恵の下着だけの身体は無防備に男たちに晒されている。
 岩松は理恵を抱くようにして背中に手を回し、理恵のブラジャーのホックに手を触れた。
『お嬢さん、いよいよおっぱいを見せてもらうぜえ』
『いやあ! やめてえ!』
理恵は首を激しく振ったがどうすることもできない。岩松がブラジャーを引き剥がした。スリムな外見から想像もできない豊かな乳房が露わになった。一点のしみもない真っ白で豊饒な乳房だ。しかし重みで垂れてはおらずしっかりと張っていて前に突き出し小さめの薄桃色の乳首が少し外向き加減につんと上を向いている。賛嘆の声が男達の間から洩れた
『おい、すげえ綺麗なおっぱいだぜえ』
『たいしたもんだぜぇ、いただきま〜す』
 整った顔立ちだが杏のような眼とすっきりとした小ぶりな鼻と、下唇が少し膨らんだ口元が美貌に愛らしさを添えている。腰がキュッとしまって背中から尻にかけての滑らかなラインが実に美しい。しっかりした腰と筋肉のよくついた大腿部、すっきりとカモシカのように伸びた脛、そして豊かな胸・・。理恵は天性の美貌に加えて美しい肢体を兼ね備えていたのだ。
『さあさあ、ショータイム!』
 岩松はそうふざけて言いながらパンティに手をかけた。
『どうか、どうかお願い、それだけは止めて下さい!』
 哀願を無視して、岩松はゆっくりと理恵のパンティを下にずらしていく。羞恥で理恵の顔がみるみる鮮紅色に染まった。少なめの黒い繊細なしげみが露出すると、理恵は身もだえして抵抗したが、がっしりと若い男に抑えられて身動きできない。岩松はパンティを理恵の足首までズリ下げるとすばやく抜き取って炭火の中に放り投げた。ぼっと音を立てて下着が燃え尽きた。全裸で両手を吊り上げられた理恵は、遮る物のない局部の黒い繊毛を隠すかのように太腿をもじもじさせている。美しい杏のような目から悔し涙が一筋こぼれ落ちた。しかし声は立てず唇をかみしめたままである。
 『お嬢さんよ、もうあんたには下着なんかいらないんだよ。これからは奴隷なんだからな、ずっと素っ裸のままでいるんだよ。』
 そう岩松が言うと、男達はどっと哄笑した。
岩松はしばらく理恵の身体を舐めるように観察してから、乳房を掴んだ。
 『あ、あ・・』
 『なかなかいい手触りだぜぇ。お前らも楽しめ』
 岩松が言うと、子分どもがわらわらとヒルのようににじり寄って理恵の全裸の肢体にてんでに触ったり、キスしたりし始めた。しっかりと閉じられた理恵の股間に手を入れて陰部に指を入れる男もいた。ひどい屈辱だった。しかし、理恵は声を上げることなくされるがままになっていた。
(泣き叫んでもどうしようもない・・あいつらを喜ばすだけ・・)
 理恵は気丈に自分にそう言い聞かせた。
しかし本当に嫌だったのか、されるがままにされたかったのか。どちらなのだ。心の中でもう一人の自分がそうささやいていた。

 『よし、もうやめとけ。本当のお楽しみはこれからだからな』
 子分どもがさっと理恵の身体から離れた。
 岩松は滑車の縄を緩めた。理恵の身体が床に崩れ落ちた。理恵は身体を縮めて床に横たわる。岩松は壁の金具に掛けてあった黒ずんだ麻縄を何束か抱えてきて理恵の傍らにどさっと投げ出した。岩松はくずおれた理恵の上体を起こしていったん手首の縄を解くと、横座りになっている理恵の背後に回って、麻縄で理恵の細い手首を後ろ手に縛りあげた。ちくちくする太い麻縄が手首に食い込む感触に理恵は思わず小さな悲鳴を上げた。自縛ではとても考えられない厳しい縛りだったからだ。
 それに触発されたかのように理恵はシャンと身体を起こして正座した。恰も覚悟を決めて牢役人のお縄を受ける女囚であるかのように。
 『こんなことをされても父の在り処は知らないわ。たとえ知っていてもあなたに言うものですか。好きにしたらいいわ。』
  手首に縄をかけられながら理恵は肩越しに岩松をキッと睨んで言った
 思いがけない事の成り行きに岩松がけおされて縄がけの手を止めた。
 が次の瞬間、怒りを露わにして喚いた。
 『くそ、御託を並べやがってぇ! おめえみたいに開き直る女は初めてだ。お望み通りにしてやるぜ!』
 岩松は正座した理恵の手首が背中で交差するまで思い切り縄を引き上げると、その縄尻を理恵の首に二重に巻きつけた。理恵にはおなじみの縛り方だったが、自縛では腕が下がった状態だったのに、これは腕を吊りあげられているので腕が下げると首縄が絞まる仕掛けになっていることだった。手首がこれ以上、上がらないほど高手小手に引き上げられているので、腕を常に上げていないと首が絞まるのだ。
 首縄のチクチクした感触が理恵の被虐感を煽った。恐怖におののきながら緊縛を受け入れているもう一人の自分がいたのだ。
 首に巻いた麻縄の縄尻が喉元から胸の谷間に2本垂れさがっている。岩松はその縄尻を理恵の両脇の下に通して背中に回し、背中で縄をぐいと引き締めて連結した。そして余った縄を今度は肩から胸に回し首を挟み込むようにして脇を通っている縄に結び付け、結び目を作る。さらに乳房の谷間に縄を回し、もう一度結び目を作る。これで胸の上部に菱縄が出来上がりだ。そこから乳房を持ち上げるようにして縄尻を背中まで這わせてぐいと思い切り締め上げて止め縄とした。
 胸の上下にめぐらされた縄で豊かな乳房が絞りあげられて否応なく前にせりだし、男どもの嗜虐心をそそる。岩松はもう1本の麻縄を左右の乳房の下を這う縄に結び、縄尻を揃えて鳩尾の下で結んで2ツ目の菱縄をこしらえ、縄尻を背中に回して連結した。余った縄をさらに腹に回して臍のあたりに3ツ目の菱縄をこしらえた。見事な菱縄が娘の上半身をぎりぎり締めあげている。
 『さあ、止め縄だ』
 岩松は余った縄で、白い腹をギュッと思いきり括しあげて腰の後ろで結んで止め縄にした。腹が縄で無残にくびれている。これで菱縄縛りの出来上がりである。この縄がけは時間が経過しても縄が緩むことはない。女囚が息もつけないほどがっしりと縛り上げることができるのである。岩松は後ろに下がって縛り具合を確かめた。
 『ほれぼれするぜ、縛りがいのある娘(あま)だ』
 理恵の乳房は、真っ白で張りがあって掌にあまるほどの豊かな美乳だ。その美しい乳房が菱縄で縊りあげられていやがうえにも大きくせり出し、薄桃色の乳首がつんと上を向いてそそり立ち男たちの気を誘う。理恵の首から胸の間は豊かな胸にくらべあまり肉がついていない。鎖骨が浮き出して肩との間にくぼみがある。贅肉のついていない若い娘の証だ。
 岩松は指を縄と肌の間に差し込んで縄のたるみを確かめてみた。指一本がやっとこじいれられるかどうかという厳しい緊縛がかっちりと理恵の肌を締め付けている。自分がかけた縄に寸分のたるみもないことを確かめると、岩松はいきなり理恵の乳房を両手で鷲掴みした。柔らかいが張りがあって掌に吸いつくような美しい乳房だ。
 『ああ・・・』
 理恵の口から思わず切なげな声が洩れた。
 『へへ、気持がいいのかい、ねえちゃんよ』
 乳房をこねまわして乳首を摘んで吸いつく。散々楽しんでから、岩松は理恵の身体から離れ、もう2本の麻縄を理恵の目の前でぶらぶらさせた。
 『まだ終わっちゃいねえぞ。へへへ』
 『ああ、いや・・・』
 岩松は理恵の両腕を2本の縄で縛り、縄尻を脇の下に通し背中に回してぐっと締め上げて止めた。理恵の上腕が脇にぴったり固定されてぴくりとも動かせなくなった。岩松が余った縄を理恵の背中から腰の後ろの縄にこじいれた。
 『膝を立てろ!』
 理恵がそろそろと膝を立てた。
 『脚を開け!』
 理恵が観念したようにおずおずと脚を少し開いた。
 岩松が股間に縄を通した。ざらざらした麻縄が理恵の陰部をこすりあげた。
 『う、あ・・』
 理恵は小さく呻いた。しかしその縄は陰門をわずかにそれて左右の股関節の上のあたりの腰縄に通されてぐっと引き絞られた。こうすると尻が2本の縄で左右に押し広げられて陰部と肛門の粘膜が露出するのだ。この股縄は陰部を直接責められるように露出させてなおかつ女に羞恥心をいだかせる縄である。岩松は腕のよい縄師だったのだ。最後に岩松は余った縄で娘の大腿のつけ根を二重にきつく縛りつけた
 上半身を見事な菱縄縛りにされ、股縄までかけられて正座した理恵はまさに女囚そのものだった。縄がまるで蜘蛛の糸のように肌に這いまわって息もつけないほどのきびしい縛りである。自縛で楽しんでいた縄とは天地ほども違っていた。麻縄で全身が締め付けられ、呼吸することも苦しい。心臓の動悸が早くなり胸がバクバクと高鳴る。
 理恵は女囚のように眼を閉じてがっくりとうなだれていた。しかしこれこそ・・・理恵がひそかに望んでいたことなのだ。

 岩松は手下に命じた。
『坐禅を組ませろ!』
 手下たちがわらわらと寄ってきて理恵の右足首を掴み、強引に捻じ曲げて左の大腿に乗せ、左の足首を右の大腿に乗せる。坐禅の体型だ。身体の柔らかい理恵にとって座禅はそれほど苦痛ではなかったが、後ろ手に縛られた理恵には自の力で座禅を解くことができない。岩松は後ろから理恵の背中をこずいて前に押し倒した。額と両膝が床に付き、理恵は尻を高々と無防備に突き上げたまま、後ろを見ることもできない。女としては何とも屈辱的な姿勢である。二本の股縄で左右に割られた尻の間にくっきりと鮮やかなピンクの陰部と菊花が露出している。
 『さあ、お嬢さん、おめえを犯してやるぜ、俺が一番乗りじゃあ〜』
岩松はそう叫ぶと服を脱ぎ、ズボンとパンツを降ろして全裸になった。真っ黒い茂みから隆々と勃起した男根が聳えたっている。極太の巨大な逸物である。亀頭は赤黒くどくどくと脈動し、先端から早くも先走り液が滲み出てきている。岩松は理恵の尻を後ろから左手でがっしり押さえつけ、右手で股縄を引き分けて陰部を露出させた。陰唇がぬらぬらとめくれあがっている。岩松は濡れた男根の先端を割れ目の入り口に押し当てた。
 理恵は観念したように唇をかみしめて凌辱の時を待っていた。哀願もしない。
 岩松が先端をグッと膣にこじいれた。亀頭が蕾にようやく収まる。
『ウムム、こりゃ固いぞ、まさか生娘か?』
『つうぅ・・ああ・・』
 理恵の呻き声。そこに快楽への期待が入り混じっているのかどうか自分でも分からなかった。
 ぐいぐいと岩松は巨大な男根を押し込んでいく。男根のあまりの巨大さに膣が張り裂けそうだ。理恵は生娘ではなかった・・・大学2年生の時、医学部の先輩と付き合っていたことがあり、それなりの経験はあったが、彼が米国に留学してから半年以上経っていて、セックスはしていない。だから巨大な男根がそう簡単に挿入出来るはずもない。ましてこんな状況なのだ。身体が拒否している。しかし脂汗を流しながら岩松はぎりぎりと押し込んで秘所をこじ開けていく。半分まで押し込むとあとは簡単だった。抵抗力を失ったかのようにズブズブと押し込まれた。子宮の口に先端が達しても長大な男根の根元がまだ見えている。巨大な男根が理恵の躰を文字通り串刺しにしていた。理恵は脂汗を流して耐えている。高手小手に括られた手が空中を掻いている。岩松は両手で理恵の尻をがっしりと抱えてゆっくりと男根を前後に抽送し始めた。
『う! う! う! う!』
 ゆっくりと突き入れられる度に理恵は小さく呻いた。そのたびに額が床を擦る。しだいに抽送の動きがスムーズになり、だんだんと速くなった。理恵は息も絶え絶えになって唇を強く噛みしめている。ドスドスと巨大な男根が理恵の身体を貫いては膣口まで戻され、また一気に貫く。理恵は無言で耐えている。それは恥辱に耐えるためであったが、そればかりではなかった。快感を感じはじめていたからだ。実際、理恵の膣は愛液が泡のように滲みだしてきていたのだ。
 だが巨大な陰茎の先端が膣の奥深くにこじ入れられ挿入の度に子宮の口にあたってくるのを感じて、理恵はぞっとした
 (妊娠するかもしれない・・・こんな男の子どもなんて!)
 理恵は狼狽して思わず叫んだ。
『いやあ、いや・・やめてください!』
『いいぜ、いいぜ、滑らかになってきたぞ、ねえちゃん、ひょっとして感じているのかい』
 岩松は汗だくになって理恵を刺し貫きながら言った。
岩松は後ろから理恵の乳房を抱えて上体を反らさせるように乳房を揉みしだきながら、首筋に接吻し、髪の毛をつかんで頭をのけぞらせて顔を舐めまわす。理恵の身体から女体の香りが立ち昇り、岩松の鼻をくすぐる。その香りがますます彼を駆り立てた。凌辱の一部始終をカメラが舐めるように撮影している。
 しかし・・全裸の身体を麻縄でがんじがらめに緊縛されたまま見も知らぬ男に犯される。これは自分が望んでいたことではなかったのか。吐き気がするような嫌悪感と妊娠への恐怖の裏側で、いやそうだからこそ理恵は自分の奥深い欲望を凌辱のさなかではっきりと悟ったのだ。
 四半刻ほどで『うおー! うう』とまるでトドのような雄叫びをあげて岩松が痙攣した男根が引き抜かれると膣からどくどくと大量の白濁した精液があふれ出した。
『しまっててよかったぜえ。お嬢ちゃん。妊娠したら子供は産んでもらって外国に養子に出すことになっているから、安心しな』
 岩松がそう言うと子分どもが一斉に爆笑した。
 汚辱と快感で頭がまっ白になった理恵にはその声が遙か彼方からつぶやいているようにしか聞こえなかった。
 『さあ、今度はてめえ達の番だ』
 岩松が言うと男達は一斉に服を脱ぎ捨てて裸になった。どの男も男根が隆々と勃起している。輝くばかりに美しい麻縄で括られた裸の肢体に一斉に群がった。まるで獲物に食らいつくハイエナのように。柔肌を撫で回す者、横一文字に閉じた唇に口づけする者、丸い肩を噛んで感触を味わう者、顔をなめ回す者、秘所に指を差し込む者。
 さんざんなぶった挙句、あらかじめ順番を決めてあったのだろう、例の若い男が高々とかかげられた理恵の後ろにひざをつき、尻を両手で引き寄せるとまだ白い精液があふれ出ている陰部に隆々と勃起した男根の先端を押し付けて一気に刺し貫いた。
 『ああ・・つう・・』
 得体のしれない快感が身体を走った。
 理恵のうめき声に刺激されたかのように男は激しく突きまくり始めた。年が若いだけに先ほどの岩松の抽送とは違ってせっかちな動きだ。突かれると理恵の身体が木の床で滑って前に動くので、男は理恵の手首の縄を掴んで動かないようにしてピストンのように犯し続けた。男の陰茎が理恵の膣の中で大きく膨らみ、やがて男はうめき声をあげて大量の精液を理恵の体内に放出して果てた。男が男根を引き抜いた。膣からだらだらと白濁した液が流れ出る。そんなことはお構いなしに猛り立った次の子分がすかさず入れ替わって理恵に男根を挿し入れる。
 こうして4人の男が一人、また一人と理恵を後ろから犯し、凌辱し続けた。理恵の美しい躰が男の汗と唾液と精液で汚され尽くされた。理恵はと言えば凌辱の間、観念したように声も挙げずずっと目を閉じたままだった。涙を流して汚辱に耐えながら一刻も早く終わって欲しいと願った。しかしその一方で、何か心の奥底の秘めた欲望が満たされていることを微かに感じていた。麻縄で緊縛され、犯され、拷問される。これが理恵の望んでいたことだ。実現されることはないと思っていたこと。自らの躰を縛って辛うじて満たしていた欲望・・・吐き気を催しながら、恥辱を受け入れて喜びさえ感じている自分を理恵は嫌悪していた。

 三角木馬

 1時間ほどで凌辱が終わった。男たちは裸になったままで煙草を吸ったりビールを飲んだりしてくつろいで、強姦の感想を興奮さめやらぬ口調で言い合っている。
 理恵は坐禅を解かれて縛られたままで目を閉じて床に横たわっていた。陰部から白い精液が床に流れ落ちていた。きつい緊縛で手首がしびれ息をつくこともままならない。長時間無理な座禅の姿勢を取らされていたために股関節がひどく痛い。しかし理恵は耐えようと思った。耐え難いむごい苦痛に・・・その中にある被虐の快感を味わい尽くしたかったのか、矜持のためなのか自分でも分からなかったが。
 しばらくして、一息入れた岩松が声をかけた。
 『さあ、お嬢さん、これから乗馬といこうか。』
 理恵がうっすらと目を開けると、岩松が男達に命じて奇妙な形の道具を部屋の真ん中に据えさせていた。山形の木製の胴体に3本の脚がつき、尖った鋭角の背が上を向いている刑具だ。理恵が雑誌でみていつか自分も責められたいと念願していたもの・・・。
 三角木馬。それが今、眼前にある。
 SM映画に出てくるような、角をまるめたりゴムや皮をあてがったりした柔なものではない。木馬の背が鋭角に立って尖っているのだ。木馬の胴体のあちこちにどす黒い染みのようなものがついている。
 (拷問された人の汗や血が染み付いている・・)
 理恵は直感した。
 (わたしも女囚のように縛られたままこの三角木馬で拷問にかけられるの・・・)
 底知れない恐怖とどす黒く疼くような被虐の感覚が理恵の中で交錯した。そんな思いを知る由もなく岩松が喚いた。
 『これに乗ると、お前のあそこが壊れるぜえ、すぐに降ろしてくれって泣き叫ぶからな。』
 (いよいよなんだわ・・・)
 理恵は心の中で呟いた。恐ろしい三角木馬の拷問・・いつか写真で見た股を割かれる女囚・・自分がまさにその女囚になるのだ。甘美な苦痛の予感に身が震えた
 屈強な体格の男が二人近寄って理恵の両足を抱えあげ軽々と木馬の上にはこんだ。理恵は足をばたつかせるわけでもなくされるがままになっていた。子分どもは理恵の両足を割り開いて木馬の背に跨らせ、張りのある丸い尻を引き分けて陰門の真ん中に木馬の鋭い角を当てがった。体重が木馬の鋭い角にかかって股間に食い込む。陰部から白濁した男の体液が木馬の背に伝い落ちる。
 『ああ・・つつ・・あ、あ』
 『じっとしてろよ、ずり落ちないようにしてやるからな』
 両側から子分たちが理恵の体を支えている間に、岩松は天井の滑車から縄を手繰り寄せ、黒髪を素早くたばねて結わえつけた。
 『さあ、仕上げをご覧じろとくらあ』
 岩松がゆっくりと縄を引き上げると黒髪が吊り上げられ、否応なく理恵の上半身が伸びあがった。背筋がまっすぐになるまで髪の毛を吊りあげると、岩松は縄尻を柱の金具に繋いだ。理恵の体を支えていた男たちが手を離した。いまや吊りあげられた髪の毛で体が支えられているのだ。美しい顔は前を向いたままでもう男たちの視線を避けることもできない。全体重が木馬の背にかかって激痛が理恵を襲った。
 『つうう・・いや、いや!・・』
 理恵は木馬の背の上ではじめて悲痛な声をあげた。
 
 三角木馬の拷問が始まった。刑架にかけられた一糸まとわぬ美しい娘の裸体を、男達は固唾をのんで見とれている。どの顔もどす黒い嗜虐に満ちている。どの男も先ほどの強姦の際に全裸になったままで、一度放出したにもかかわらず全員もう怒張している。片手で自分のものをしごいている男もいる。
  カメラが近づいて理恵の顔をアップで撮影し始めた。理恵の美しい顔から汗が流れ落ち、全身から玉のような汗の粒が吹き出し始めた。髪の毛を吊り上げられているので苦悶の表情が男たちの目に晒されている。
 髪が抜けそうに痛い。ぐらぐらする理恵の身体を縄で吊りあげられた髪の毛ががかろうじて支えているのだ。しかし理恵にはその痛みよりも股間の痛みの方がはるかに耐えがたかった。
 『娘さんよ。さっきの大口はどこに行ったのかな。同じことをもう一度いってみろ!
 もう一度聞く。おやじはどこにいるんだ。』
 『知らないわ! 知ってても言うもんですか!』
 理恵は歯を食いしばって答えた
 『そうか。じゃあ白状するまでそのまま乗馬してもらおうか。責めはまだ序の口だぜぇ。』
 岩松はせせら笑いながら言った。手下どもが一斉に哄笑した。
 
 男たちはのんびりと煙草を咥えて談笑しながら木馬上の理恵の動きを見ている。
 と、理恵が躰をゆすり始めた。陰部に食い込む背梁の位置を少しでもずらして、苦痛をまぎらわしたいのだ。わずかしか動けない。それでも木馬が揺れてカタカタ音をたて、縄がこすれ合ってぎしぎしと音を立てる。効果がないので今度は両脚で強く木馬の背を挟みつけて身体を少しでも浮かそうとする。しかし鋭角の木馬の背とあっては、ほんの一瞬しかもたない。すぐに体重でずり落ちてより深く鋭い脊梁が股間に食い込んでいく。無駄な努力だと悟ったのか、理恵の呻き声がしだいに悲痛な喘ぎ声に変わってきた。
 『うう・・・ん、ああ・・・つつう・・・』
 理恵は喘ぎながら唯一自由になる脚をくねらせ始めた。しかし鋭い背梁は下半身にがっしりと食い込んだままだ。そのうえきりきりと上体にめぐらされた菱縄が小揺るぎもせず理恵の躰を締め付ける。身悶えするたびに菱縄に絞りあげられて突き出した乳房がときおりぷるぷると震えた。後ろ手に括し上げられた掌が時折もがくように宙を掻いてギュッと握りしめられる。苦痛の波が間隔をおいて襲ってくるのだろう。苦悶がわずかに遠のくと、握りしめられた掌が徐々に震えながらゆっくり開いていく。開いた掌に汗がじっとりと滲んでいた。粒のような汗が火照った顔に浮かび、ほつれた髪が汗まみれの額にへばりついている。理恵はただ唇を噛みしめて喘ぎながら耐えるほかなかった。
 カメラを抱えた男が女囚の回りをゆっくりと回りながらその一部始終を撮影していた。時折、近づいて苦痛に喘ぐ理恵の美しい横顔をアップで長々と撮り、縄で締めつけられた首筋、くくしあげられた美しい見事な乳房が微妙に揺れる様、高手小手に捻りあげられて固く縛られた両腕、縄でくびりあげられた白い腹が呼吸のたびに上下する様子、あられもなく割り裂かれて木馬の両側にだらりと垂れた美しい脚、反り返ったつま先、繊毛に覆われた恥部に稜角が深々と潜り込んでいる様をカメラが執拗に撮る。アップで撮ると思えば少し離れて汗ばんだ裸体を前から後ろから自在に撮影している。
 『お嬢さんよ。このビデオは日本中で売られるんだぜ。お前さんのような別嬪の娘っ子が拷問されて泣き叫んでいるのを見たがる奴が世の中にはたくさんいるのさ。でもな、お前さんは秘密クラブの特別会員様向けの超限定品だ。本物のマニアは偽物には見向きもしない。本物の拷問が見たいのさ。しかも若い美しい娘に限る。だから一本10万でも買うのさ。お前さんのような別嬪だったら20万でも出すだろうって。政治家や警察の偉いさんにも会員がいるそうだからな。あんたの親父の借金はこれで返してもらうぜ。』
『ああ・・そ、そんな、それだけは・・・許して・・・』
 理恵はうめきながら吊られた頭をいやいやするように振った。
 それは想像するだに恐ろしい恥辱だった。自分が裸で拷問されて悶える姿を見も知らぬ多くの人が楽しむのだ・・・
 しかし岩松の言葉は理恵の心の奥底の被虐の感覚を刺激する何かがあった。拷問の苦痛だけではない、羞恥や恥辱に毅然として耐えるのだ・・キリシタンの女性達のように・・・
 理恵はぼんやりとそう感じていた。
 
 男達は縦横に縄がけされた理恵の美しい肢体を食い入るように見入っていた。もがき苦しむ娘の肌から汗とともにえもいわれぬ女体の芳しい匂いが立ち昇っている。フェロモンに引かれるオスのように男どもは一人、二人と理恵ににじり寄り、紅潮した肌をなでさすり乳房を掴んだり、乳首をつまんだりし始めた。それに飽き足らないで一人が木馬を揺する。
 『ええかげんに白状しろい! おらおら痛いだろ。』
 『ああ、つうう・・』
 調子に乗った二人の男が左右から肢を掴んで引っ張ってさらに理恵の苦悶を倍加させた。
 『あああ! 痛い! つう・・やめて、お願い!』
 理恵は身をよじらせて哀願した。
 『よし、その辺にしときな』
 岩松は顔を近づけて尋ねた。
 『どうだ、乗り心地は。そろそろオヤジの居所を吐かんか。』
 『ほ、本当に知らないんです。どうか降ろして・・』
 『そうはいかんなあ、おめえが吐くまで乗馬して頂くからな!』
 『で、でも・・ほんとに・・知らない・・です。許して・・』
 理恵は弱々しく答えた。木馬に架けられる前の強がりはもうどこかへ消え去っていた。
 『強情な娘だ。よし、石をつけろい』
 岩松があごをしゃくると、二人の手下が素早く部屋の隅からひとかかえもある石を二つ、重そうにかかえてきて、理恵の左右の脚の下にゴトンと置いた。石は人の頭より一回り大きい。磨いていない丸い自然石で重量はそれぞれ20キロ位はあるだろうか。男たちは荒縄で石をしっかりと十文字に結わえつけ始めた。
 その石の上に、理恵の身体から流れた汗が足先からぽたぽたと滴り落ちて黒い染みになっていく。理恵にはその石が何を意味しているのかよく分かっていた。三角木馬の拷問にかけられた女囚の足には必ず石が吊り下げられているのを図版で見て知っていたからだ。しかし実物は理恵が思っていたよりずっと大きく遥かに重そうだった。しかも写真では両肢の間に一つ石が吊されていただけだったのに、この様子では左右の肢に一つずつ石が吊り下げられるのだ。
 (こんな重い石が自分の足首に付けられる・・)
 そう思うと理恵の身体がびくっと慄いた。と同時に被虐の感覚がまたもや理恵の身体を疼せた。
 石を十文字に結わえてしまうと、一人が石を理恵の膝の高さまで持ち上げた。その間にもう一人が短い縄尻をきゅっと締まった理恵の足首に結わえている。木馬の反対側で同じ作業を別の子分達がしている。
 理恵は襲いくる恐ろしい苦痛の予感に、一糸まとわぬ裸身を震わせている。
 男たちがしっかりと縄尻を理恵の足首に縛りつけたのを確かめて岩松が声をかけた
 『どうだい、お嬢さん、今からあんたのあんよに重いのをぶら下げてあげるからね。
  ちょっと我慢の子だよ』
 男たちがどっと哄笑した。
 理恵は髪の毛で吊られてほとんど動かせない頭を、いやいやをするように横に振った。一瞬かすめた被虐の思いとは裏腹に激痛の予感に圧倒されていた。
 『やめて・・ください・・・お願い・・許して・・』
 理恵の悲痛な哀願もものかわ、岩松の無情な号令がかかる。
 『おめえみたいな強情な娘っ子は許せねえなぁ、石を放せ!』
 男たちが石をかかえた手を同時に離した。石が無情に落下し、左右の足首にそれぞれ巨大な重量の石がガクンとぶら下がった。両脚が石の重みで伸びきる。その瞬間、木馬の背梁が楔になって理恵の股間に打ち込まれた。
 『うあー! あああああ・・・・』
 悲痛な鳴咽が部屋にこだました。
 鮮血が股間から染み出して木馬の背をつたい、汗や涙とまじりあって床にしたたり落ちた。鋭い背梁がついに股間を裂いたのだ。

 絞首刑

 半時が経過した。理恵は相変わらず木馬の架けられたままの姿だ。脚に結わえ付けられた石の重みですらりとした長い脚が伸び切って足首に荒縄が食い込んで血がにじんでいる。石の重みで縛られた足首から先が紫色に変色してきていた。足の裏の下に吊り下げられた重い石がわずかにゆらゆら揺れている。
 『はあ、はあ、ああうう・・・』
 理恵はか細いうめき声をあげながら激痛に耐えていた。無理もない、理恵の体の中心に打ち込まれた楔が身体を二つに裂こうとしているのだ。石の重みのために肢で木馬を挟んで股間の苦痛を和らげることなど全くできない。全身から滝のように吹き出した汗が雨のようにぽたぽたと床に落ちる。男たちが理恵の目の前であざけっても、理恵の美しい杏のような目は、見開いたまま宙をさまよっている。身体を裂くような股間の激痛に耐えかねてときおり理恵は木馬から逃れようとするかのように身をよじらせた。そのたびに躰がびくびくと痙攣し麻縄に絞られてせり出した乳房が震えた。
 『はああ・・・ふうう』
 縛られた胸が、時折ふくらんで大きく息を吸い込んで吐きだす。まるで大きなため息をついているかのようだが、実際は菱縄で厳しく緊縛されたうえ首縄までしっかりかけられているので満足に息がつけないのだ。
 (も、もう・・たえられない・・)
 理恵は、心臓がとてつもなく速く脈動するのを感じていた。激痛に耐えかねて気が遠くなりそうだ。しかしそれでも理恵は歯をくいしばって耐え続けた。悲鳴を上げることもなく、ただ呻いている。きつい縛めで手首から先が紫色だ。高手小手に縛りあげられた両の腕もとうに感覚がなくなっている。
 
 どれくらいの時が経ったのだろうか。岩松にとってもう尋問などどうでもよくなっていた。激烈な苦痛に耐えるこの美しい女体をもっと苛むことしか頭になかった。この娘が苦痛に耐えかねて絶叫して哀願するところを見たくなった。これまで岩松が拷問にかけてきた女たちとは違って、この女は苦痛に哀願もし、悲鳴もあげはしているが、その実泣き叫んで慈悲を乞うことはない。唇を噛み、声をかみ殺して何とかこの凄惨な拷問に耐えようとしているのが見て取れる。この女を絶叫させたい、完全に屈服するまで痛めつけてやりたい。岩松はそんな思いに駆られていた。彼は天性のサディストであった。
 岩松が叫んだ。
 『なかなかしぶとい娘だな。もっと石をかましてやれ!』
 岩松の声で、理恵は恐怖で身体がこわばった。
 思わず理恵は叫んだ。
 『からだが、裂けます!・・お、お願い、やめて・・』
 『ちょっとやばいですぜ。これまで2ツも吊るした女はいないですぜ、真っ二つになって死んじまうかも。ちょっともったいねえや』
 若い男がそう言うと、岩松が部屋の隅に置かれた椅子にだらしなく座っているゴマ塩の髪の男に聞いた。
 『おい、ドクター、どうなんだ、無理か?』
 間延びした声で答えた。
 『やってみなければわからんけど、これくらいでは身体がさけることはない。馬で両側から引っ張ってもなかなかじゃ。まあ若くて体力がありそうだから大丈夫かもしれん。蘇生させることもできるじゃろうし・・』
 答えには真剣味があまり感じられなかった。このドクターと呼ばれた男はただ若い美女がもだえ苦しむところをもっと見たいだけなのかもしれなかった。
 『ああ・・やめて・・やめて!・・』
 緊縛された身をよじらせて哀願する理恵を尻目に、手下たちは笑い声をあげながら、血の滲んだ細い足首にさらに縄をかけて重い石を結わえ始めた。手下たちが石を縛り付け終わると、岩松が掛け声をかけた。
 理恵は必死に哀願した
 『やめて・・やめて・・許して・・おねがい・・』
 『うるせえ! いまさらお願いしたって聞いてもらえねえよ。落とせぇ!』
 2個目の重し石が同時に落下して両脚の爪先にガクンと吊り下がった。
 今度は楔どころか、斧で股間を裂かれるような激痛が理恵を襲った。理恵は木馬の上でのけぞって絶叫した。
 『やめてぇ! お願い・・』
 悲鳴と哀願が交錯する。理恵の身体がガクガクと痙攣した。楔に抉られた股から鮮血が吹きこぼれて木馬の背を紅に染めた。それを見て男たちがどっと歓声をあげる。
 『ねえちゃん、足の先に重たいものくっつけて御苦労さんだね〜』
 男の一人が冷やかすと、みんながどっと哄笑する。
 『うう・・・・ああ・・』
 悲鳴がみるみるうちにか細く弱くなっていく。
 男たちの目の前で、理恵は再び耐えがたい苦痛に身悶えするしかなかった。
 無理もない。片足に20キロもの重い石が2つづつ、両脚で80キロもの重さの石が吊り下げられているのだ。
 言葉にならない低い呻き声が唇から洩れ始めた。半開きの口の端から涎がツーっと一筋垂れた。美しい目から大粒の涙が幾筋も零れ落ち、全身から汗が噴き出して滝のように流れ落ちる。髪を吊られて身動きのできない体を、理恵はまた揺らしはじめた。ギシギシと縄がこすれた。超人的だが無駄な努力だ。だがそれしか苦痛から逃れるすべはないのだ。
 娘の苦悶を、男たちは怒張をしごきながら興奮して見ている。
 カメラは片時も休まず舐めるように理恵の体を撮っている。
 木馬に架けられた理恵は惚れ惚れするほど美しかった。縄が縦横にめぐらされた全裸の美しい娘の身体は、汗でぬらぬらと濡れ、天性の滑らかな白い肌がバラ色に輝いていた。
 目を閉じ眉間にしわをよせて嗚咽しながらも歯を食いしばって耐えている理恵。まるでキリシタンの殉教者のように。しかし耐えがたい苦痛を耐え抜く矜持をいまだ失っていないのが岩松には見て取れた。それが岩松の嗜虐心をいっそうあおり立てた。
 『強情な娘っ子だな。ちょっといたぶってやるか。』
 岩松は壁にかかっている黒ずんだ麻縄の束を解き、理恵の頭上の天井を走っている梁に投げあげた。その先端を掴んで理恵の顔の真ん前に下ろして近づけた。
 『少し痛みを和らげてやろかい』
 理恵はその声でかすかに目を開けた。目の前にぶら下げられた縄を見ても、それで何をされるのかよく理解できない様子だ。岩松はにやにや笑いながら、二巻き、三巻きと縄でゆっくりと理恵の首を縛っていく。元より首縄のかかっている理恵の華奢な首が、さらにどす黒い太い麻縄で絞められていく。呼吸が苦しくなって理恵は喘ぎ始めた。
 『ハアッ・・ハアッ・・ハッ・』
 岩松は首と縄の間に指をこじ入れて、締まり具合を調べた。指一本入らないのを確かめると言った。
 『さあ、お前の首を吊りあげてやるぜ、そしたらお股の方は楽になるからな』
 手下たちがまたどっと笑う。
 理恵はやっと自分がどんな目に合されるかを理解した。
 『絞首刑・・・・・・』
 理恵はもうろうとした意識の中でつぶやいたがもはや声にはならなかった。菱縄でぎりぎりに縛られた身体が痙攣してぶるっと震えた。被虐の感覚はもう麻痺していた。今はただ激痛から逃れたい・・
 
 岩松が黒髪を括っていた縄を解いた。途端に吊られた髪の毛で支えられていた体が横に傾いて絞首縄がグッと絞まった。
 『ぐふうう・・』
 理恵は木馬の上で懸命にバランスを取ろうともがいた。しかしもうどこにもそんな力は残っていなかった。絞首縄に全体重がかかる。絞首縄が喉に食い込んで木馬の上で理恵は首を絞められていく。息ができない。
 顔がみるみる紅潮しはじめ、目が虚ろになった。
 『ぐうう・・うう・・』
 しかし事はそれだけでは済まなかったのだ。
 『さあ、絞首刑の始まりはじまりい』
 嗜虐の喜びで目を充血させた岩松が絞首縄をゆっくりと引きあげ始めた。
首が寸刻みに吊り上げられていく。
 『ぐぐぐぐ・・うう』
 理恵の上体が徐々に伸び上り絞首縄がさらに絞まっていく。
 首を絞めあげられながら突如として理恵の心にかつて見た1枚の写真が浮かんだ。
 絞首刑になった若い女性の2枚の写真。ナチスの士官によってまさに絞首される若いブロンドの美しい娘だった。場所はウクライナ、第2次世界大戦の独ソ戦においてナチスに対する抵抗運動の闘士だったのだろうか、1枚目の写真は、ナチスの親衛隊士官が後ろ手に縛られた娘の首に絞首縄をいまやかけようとしている。彼女は恐れる風もなく毅然として前を見つめていた。2枚目の写真は処刑後だ。彼女の首が無残に縊られ後ろ手に縛られた体がだらりと絞首台からぶらさがっているが、その顔は苦痛の色もなく穏やかで美しく高貴でさえあった。
 (私も・・そうありたい・・)
 そんな悲壮な思いが理恵の心を一瞬駆け抜けた。
 その密やかな思いとは裏腹に、岩松は無慈悲に体重をかけて一寸刻みにそろそろと絞首縄を引き上げていく。両肢に重い石を吊り下げたままの理恵の身体が徐々に木馬から持ち上がり、首が縊られていく。身体が10cmほど木馬から浮き上がったところで岩松は縄を止めた。処刑されたブロンドの娘と同じように理恵の顔がくびられて傾いでいる。目は苦痛と恐怖で見開いて口はパクパクと空気を求めて水面で呼吸している金魚のようだ。
 『ぐぐ・・うう・・うう・・』
 絞首索が首にめり込んで、理恵の顔が真っ赤に紅潮している。脚にかかる巨大な石の重量がそれに拍車をかける。首が伸び脚も石の重量でピンと伸び切って身体が上下に引き伸ばされている。石が肢の下でユラユラ揺れる。
 理恵が絞首されている間、男立ちは周りで冷やかしの言葉を浴びせ続けている。理恵の目がかっと大きく開いて顔が紫色に変色し始めた。
 『ぐぇ・・ごぁ・・』
 何とも言えないうめき声が洩れる。
 重い石を吊り下げられた肢が宙を泳ぐ。石が揺れてぶつかってカチカチと音をたてた。岩松が頃はよしとみて縄を一挙に緩めた。理恵の身体が木馬の上に落下した。
 『ぐああ!・・あ・・』
 悲痛な絶叫が部屋中に響き渡った。
 鮮血が股間からほとばしるように木馬の背に流れ落ちる。落下の衝撃で鋭い脊梁が陰部を抉ったのだ。傷ついた陰部に楔が再び打ち込まれて股を引き裂いていく。手下どもが理恵の身体を左右から支えた。木馬上におろされてもバランスが保つ力がないので絞首縄に体重がかかったまま窒息してしまうからだ。耐えがたい激痛に身をよじらせながら理恵は懸命に空気を吸い込んだ。絞首縄は絞まったままだが手下どもの支えのおかげで体重がかからなくなったので何とか呼吸ができる。肺に一気に新鮮な空気が流れ込んだ。
 天井の梁から縄が一本おろされて理恵の手首を縛った縄に繋がれた。高手小手に縛られた両腕がさらに高く捩じり上げられて頭が下を向く。手下どもが理恵から離れた。今は手首に繋がれた縄が理恵の身体を支えている。
 『はっはっー』
 と声が洩れる。呼吸ができるようになったのか。顔から徐々に紫色が引いていった。
 『おいおい、その美しいお顔がみえないねぇ。顔をあげろい。』
 もとより腕を捩じりあげられているので理恵は俯いたままである。
 岩松は理恵の髪を掴んでもう一度縄で束ねて天井から吊り下がった縄に結び付け、無理やり顔が見えるように上げさせた。汗と涙にまみれた顔が正面を向く。捩じりあげられた腕が千切れそうに痛んだ。
 窒息から免れてもそれは三角木馬の拷問の再開でしかないのだ。
 『う・・う・・ああ・・』
 傷ついた陰部を木馬の脊がさらに抉り切り裂いていく。しかしそれでもまだ理恵はたとえようもない激痛に耐えようとしていた。もはや汗は出ない。唇は乾いて脱水症状を起こしていた。
 『おい、水を飲ましてやれ』
 岩松の声に、手下が水の入ったコップを理恵の唇に近付けた。
 理恵が息も絶え絶えにわずかに口を近づけて飲もうとすると、コップが遠ざけられ、手下達はまたどっと笑う。数度こうした悪ふざけを繰り返した揚句にやっと与えられた水を理恵はむさぼるように飲み干した。それを見計らって岩松はおどけたように叫んだ。
 『またまた首吊りとござ〜い』
 ふたたび、絞首刑がはじまった。絞首索がゆっくりと吊り上がりはじめた。
 『う、ぐふぅ・・ぐぐ』
 理恵の気道から声にならない野太い呻き声がもれた。股間から鮮血が木馬の背にぽたぽたと落ちて紅に染め、太腿の内側から脛を伝って足の爪先から重し石の上に点々を紅い斑点を作る。
 首を縊られて宙吊りになり身もだえしている理恵を男たちは息をのんで見つめた。
 しばらくして岩松が絞首索を緩めて理恵をまた木馬の上に落とす。再び響き渡る理恵の絶叫。悲鳴が徐々に弱くなってそれに続くか細い嗚咽とゼイゼイという喘ぎ声。
 岩松はころ合いを見てまた絞首索を手繰り始める。
 凄惨な拷問であった。絞首刑は数回も繰り返し行われ、理恵は宙吊りで絞首されたまま、ついに意識を失った。岩松は急いで絞首縄を緩め、手下に命令した。
 『水をぶっかけて蘇生させろい!』
 バケツの水を顔にかけられても理恵はがっくりとうなだれたままだ。ゴマ塩の医者が脈を測った。
 『脈は弱いが何とか生きておる。なんとも強い娘じゃな。』
 医者が注射をするとしばらくして理恵の眼がうっすらと開いた。だが再び苦悶がはじまるのだ。気絶している方がよかった。
 『ううぅぅぅ・・・ぁぁぁ・・』
 意識が戻って理恵は呻き始めたがもはや声は消え入るように小さい。体力が尽きはてたのだ。理恵が蘇生すると、岩松は眼をギラギラさせて叫んだ。
 『よし、次は鞭打ちの刑や』
 岩松が皮鞭を理恵の目の前にしごいて見せた。牛皮を撚って作った3メートルはあろうかという細くてしなやかな鞭である。
 『キリストは30回鞭うたれたそうだな。おまえはその倍は鞭うってやるぜ』
 『やめて・・・やめてください・・・お許しください。お願い・・・助けて・・』
 苦しい息の中から理恵は哀願した。哀願したつもりだった。だが声になるのはつぶやくような喘ぎ声でしかなかった。矜持はもはやかけらも残っていない。そんな喘ぎ声に気を留めるはずもなく岩松は理恵の乳房に最初の一撃を与えた。
 ピシっと空気を裂くような鋭い音がして豊かな乳房を紅の条痕が彩る。
 『あう!』
 理恵が呻いた。さらに第二撃、第三撃が理恵の乳房を執拗に襲う。反射的に鞭を避けようとしてもがくと絞首索が絞まる。
 『ぐ・・ぐぐ』
 理恵の声にならない声。
 岩松は鞭を理恵の乳房から始めて腹や腰に巧みに打ち分けている。縄目の間の肌に的確にみみず腫れが刻印され血が滲む。一通り胸から腹にかけて鞭打ちを終わると今度は背後にに回って肩や背中から尻、太腿を打ち始めた。ピシっピシっと皮鞭が空気を切り裂いて縄の間の肉体を確実に捉えて美しい娘の白い肌に紅の条痕を刻んでさいなむ。凄惨な光景であった。
 理恵はもはや鞭打たれても声も出さず何の反応も示さない。鞭打たれるたびに反射的に身体を痙攣させるだけだった。身体が震えるたびに爪先の下の重石が揺れてぶつかって音を立てた。
 (ああ、もう・・だめ・・これが・・わたしの・・望んだ)
 遠ざかる意識の中で、かずかにそんな言葉が理恵の心に浮かんで消えた。
 数十回目の鞭が振り下ろされようとしたそのとき、理恵の身体がグタっと萎えた。身体の力が抜けて絞首縄に身体を預けている。岩松はかまわず鞭を振り下ろしたが鞭が肌に炸裂してももはや何の反応もなかった。ドクターが慌てて駆け寄った。
 
 第1話 完